演習(大学院ゼミ)の記録
【文献講読】
Peter J. Bowler and Iwan Rhys Morus, Making Modern Science: A Historical Survey, 2nd ed. Chicago: The University of Chicago Press, 2020.
Chapter 17. Popular Science
8パラグラフ目から13パラグラフまでを読みました。内容は以下の通りです。
18世紀イギリスでは、ロンドンから地方都市へ科学講演が広まり、巡回講演者が活躍した。その中で聴衆を引きつける演出が工夫され、19世紀には各地に科学施設や協会が増加し北米でも労働者向け講演が行われた。このことにより、科学は文化に深く浸透した。今回のゼミでは、19世紀以前の科学者が、単に「生計を立てる」・「研究している人」というだけではなく、公開講演をやっているからこそのマンオブサイエンスであり、これらがセクション全体で述べられている点が強調された。今回の文献講読で、一般向けの科学講演が、時代とともに大衆文化と深く結びつき、社会的影響力を持った点について興味深く感じられた。【新井】
【書評紹介】
Kevin Padraic Donnelly, The Descent of Artificial Intelligence: A Deep History of an Idea 400 Years in the Making. Pittsburgh: University of Pittsburg Press, 2024.
Review by David Bates, Technology and Culture 66 (2025): 588-589.
Kevin Donnelly著『The Descent of Artificial Intelligence』は、人工知能の技術的発展を扱ったものではなく、18〜20世紀にかけて社会科学や思想の中で「知性」や「人間」がどのように捉えられてきたかを辿る歴史的考察です。
書名から考えられる内容とは異なり、AI自体についての記述は限られており、その点には注意が必要だと感じました。ただ一方で、本書が示すように、AIの登場以前から人間の行動を数理的・機械的にモデル化しようとする思考が存在していたことを踏まえると、現代のAIに含まれる価値観や前提を相対化して捉える視点として興味深いとも思います。【王藝】
【研究発表】
「我が国における軍事博物館に関する研究」
今回の発表では、①我が国における軍事博物館に関する研究をするということ、②実際に軍事博物館に近しい存在である「記念艦三笠」の調査報告・考察の2つについてお話しさせていただきました。
軍事という、我が国ではどうしてもイデオロギー的な方向に進みがちなテーマを、どのように博物館教育に落とし込むか、他国ではどのように扱われているのか、軍事博物館は必要なのかなど、今後の調査を通して上手くまとめられるように努力していきたいと思います。
皆様からのコメントや質問としては、遊就館や戦争博物館で興味深い展示が見られるということや、「国家対国家」の戦争が本格化する以前についてはどう考えているのか、そもそもなぜ海外にはこのような軍事博物館があるのかといった、新しい視点のご意見をたくさんいただくことができました。【佐々木】