演習(大学院ゼミ)の記録
【文献講読】
ラヴワジエ『化学原論』(科学の名著)朝日出版社,1988年.
第1部第1章 カロリックの結合と空気状弾性流体の生成について[続]
5月19日(月)に『化学原論』(pp.24-26)を読んだ.今回は,大気圧のない場所における空気状流体の存在に関する実験について,実験器具の図を参照しながら,その手順と結果を確認した.この実験からラヴォアジエは,①エーテルは大気圧による妨げがなければ空気状流体であること,②液体から空気状流体へと変化する際には著しい冷却が起こること,の二つの結論を導いていた.しかし,他の人も指摘していたように,後者の「著しい冷却が起こる」という結論については,本文を読んだ限りでは,どの記述から導かれたのかが明確ではなかった.また,実験を行う時期によって結果が多少異なっていた点についても,その理由や説明が示されておらず,疑問が残った.今回の読解を通して,実験の解釈には文中の根拠を丁寧に読み取るだけでなく,背景や文脈を推察する姿勢も重要だと感じた.【根木】
【書評紹介】
Mike Jones, Artefacts, Archives, and Documentation in the Relational Museum. Abingdon: Routledge, 2022.
Review by Annemarie De Wildt, Technology and Culture 64 (2023): 1299-1301.
本書ではミュージアムのコレクション並びに展示のアーカイブについて、情報とモノとが上手くリンクしておらず、デジタル上の保管場所も点在しているような現状を指摘し、リレーショナル・ミュージアムという概念を提唱しています。評者もこの現状分析については“痛いところを突いている“とコメントしており、またミュージアムは展示を通して観客にストーリーを伝える性格から、中立ではないという認識が広まる中で、その文脈情報を可視化する重要性も強調していました。ミュージアムという空間をデジタル上に移行することでうまれる情報とモノ(それから空間)の断絶をどう防ぐかについては現在もまだ答えの出ていない問題であり、改めてミュージアムのアーカイブについて考える良いきっかけとなりました。【田中】
【研究発表】
「科学技術と安全保障をつなぐ汎用技術の日米関係史」
昨年度提出した修士論文の概要について発表しました。同時に、様々な歴史研究を分類した表を示し、専攻分野と隣接分野の整理しました。質疑応答では、使用した史料の所在や、史料の開示状況について質問がありました。また、科学技術史では原因解明に重きが置かれない場合もある一方で、政治と社会との関係性については注意を払うという指摘もありました。これらの意見にあるような相違点を考慮し、今後の研究では、科学技術史の知見を国際関係史へ活用するために、勉強を重ねていきたいと思いました。【松下】