2025年5月12日

演習(大学院ゼミ)の記録

【文献講読】

ラヴワジエ『化学原論』(科学の名著)朝日出版社,1988年.

第1部第1章 カロリックの結合と空気状弾性流体の生成について

『化学原論』第一章の24 ページ後半まで読んだ。第一章では「熱」が物体を構成する微細な粒子(現在の原子や分子)の熱運動を知覚したものであることがわかった上で、その熱運動を粒子に起こさせる何かを「カロリック」と名付け、これの考察を行っている。このように「○○という現象が起きているから○○が考えられる」といった言説が、ニュートンのプリンキピアに通じるものがあるとの指摘があった。また、個人的には、この時代に絶対零度の概念があった点、光が熱のキャリアであるということが指摘されていた点に驚いた。【佐々木】

【書評紹介】

Leo Corry, A Brief History of Numbers. Oxford: Oxford University Press, 2015.

Review by Umberto Bottazzini, Isis 108 (2017): 870-871.

本日、A brief history of numbersという数学史の書籍の書評を紹介しました。本書の中では数とその概念の歴史について、ピタゴラス時代から20世紀初頭までの概観を見られるとありますが、バビロニア、エジプトなどの数学が扱われていないことやギリシャの幾何学的数概念が中心に書かれており、代数学や他の数の扱い方へのバランスが偏っている点について、指摘されている点があり、この点について疑問を持ちました。自分の専門である関数の部分についてどのように書かれているのかを知るために、今後、本書そのものを読んでみようと思いました。【新井】

【研究発表】

「国際化学会議の歴史的展開」

研究テーマである19世紀の国際化学会議の歴史について、今月控えている日本科学史学会での発表のたたき台という体で報告しました。とくに今回は、博士研究で扱おうとしている会議を「純粋化学」「応用化学」という区分をもとに整理するということを初めて試みました。ディスカッションでは、純粋と応用の区別、事例の選択基準、20世紀以後の展開、各会議の議事録の扱い方などの点についていずれも重要なご指摘・コメントを頂き、学会の良い事前準備となりました。会議によって調査の進み具合はバラバラなのでやることは山積みですが、改めて19世紀の会議はそれぞれ全然違っていて面白いなと思いました。【澤井】