演習(大学院ゼミ)の記録
【文献講読】
日本貿易振興会『1958年ブリュッセル万国博覧会報告書』日本貿易振興会,1959年.
〔付録〕ブリュッセル万国博覧会のテーマ
5月 8日(木曜日)に1958年ブリュッセル万国博覧会の付録の「テーマ」(pp. 222-231)の章を読んだ。1958年ブリュッセル万国博覧会のテーマ文書は、科学技術の進展に伴う人間性の喪失という現代的課題に対し、「人間性の再生」を中心理念として万博の意義を再構築しようとするものである。展示は単なる物的紹介ではなく、人類の責任と共有すべき価値を問い直す契機とされ、万博は閉幕後も継続的に人類に奉仕する役割を果たすべきであると論じられている。この文書を通して、科学の進歩が人間性の喪失と表裏一体であること、そして科学は本来、人類に奉仕すべきものだという視点に気づかされた。科学の表象を考える上で、技術の光と影の両面をどう描くかという問いが重要だと感じた。【李】
【書評紹介】
John Alekna, Seeking News, Making China: Information, Technology, and the Emergence of Mass Society. Stanford: Stanford University Press, 2024.
Review by Anatoly Detwyler, Technology and Culture 66 (2025): 255-257.
本日、Seeking News, Making Chinaという書籍の書評を紹介しました。本書で中心的に論じられている「技術政治(technopolitics)」と「ニュース景観(newsscape)」という二つの概念は、自分の研究関心と深く関わっています。特に、大衆政治の形成におけるメディア技術の役割や、情報が社会にどのように受容・流通するかという視点は、現代のネット社会を考察する上でも非常に示唆的でした。また、本書が描くラジオの急速な普及は、21世紀初頭におけるネットメディアの広まりと同様に、メディア技術が短期間で大衆化する過程であったと言えます。こうした共通性から、両者の歴史的経験を比較することで、現代におけるネット「科普」の研究にも応用できる視点が得られると感じました。評者も本書に対して肯定的な評価をしており、今後機会があれば、本書そのものも読んでみたいと思いました。【徐】
【研究発表】
「美的経験における「見る」ということ」
昨年度執筆した修士論文についての概要とそれをブラッシュアップする目的のための研究計画を発表しました。報告は合わせて3項目(1.問題関心、2.改訂の方向性、3.具体的な分析の一例)からなり、研究で扱う理論の説明を行い、その後は改訂の向性について予定箇所とともにその理由を説明しました。発表後のディスカッションでは、章の構成に関して指摘・助言を受け、順序を再考する必要性に気づくことができました。また、他にも研究対象の選択理由を応答するなかで対象を相対化し、問題意識を整理でき、大変有意義な時間を過ごせました。【松山】