2025年4月21日

演習(大学院ゼミ)の記録

【文献講読】

日本貿易振興会『1958年ブリュッセル万国博覧会報告書』日本貿易振興会,1959年.

〔1〕総説

421日(月)に、「総説」(3-5頁)を読んだ。このパートはブリュッセル万博の時代背景を理解することが肝要であったので、冷戦が一段落した後も米ソの覇権が宇宙分野などで争われたことや、モータリゼーションが欧州で発達した時代であったことなどをテクストの内容から読み取った。感想としては、本稿の筆者は日本貿易振興会であり、彼らは万博のいわば太鼓持ちだったのだろうと感じた。振興会は大阪商工会議所と深く関係していた。彼らは万博を称えることにより、その後の1970年の大阪万博を成功させるための布石を打っていたのだろう。また、この年はベルギーがコンゴ併合50周年であった。現在だったらそれはポリコレの視点で問題視されるのではと感じた。【武笠】

【書評紹介】

Matthew Daniel Eddy, Media and the Mind: Art, Science, and Notebooks as Paper Machines, 17001830. Chicago: University of Chicago Press, 2022.

Review by Jason Ludwig, Isis 116 (2025): 185–187.
Review by Manon C. Williams, Technology and Culture 65 (2024): 1054–1055.

今回取りあげたMedia and the Mind: Art, Science, and Notebooks as Paper Machines, 1700‒1830では18-19世紀スコットランドにおいての初等〜高等教育機関で教育を受けた学習者のノートに着目し、当時のスコットランド啓蒙に関連づけられる合理性の原則が学習者の心へと内面化していく過程の考察がなされているとあります。著者は「タブラ・ラサ」と「ペーパー・マシーン」という語を引用し、メタファーである前者の語を軸に議論を組み立て、学習者のノートは後者の語としての機能だと推論しているとのことです。評者は本書で多様な学術研究が取り組まれ、科学史家や科学哲学史家をはじめとして幅広い読者の関心をひくと評しています。報告担当の私自身は芸術制作も道徳教育に重要であるといわれていることから、ノート作成も同様である点が非常に興味深く感じられ、芸術作品とノート双方ともメディアであることを再認識させられました。【松山】

【研究発表】

「インターネットにおける中国「科普」の現状」

今回の発表では、先行研究のレビューを交えながら、中国における「科普」の歴史について紹介しました。一部の内容は昨年のゼミでも取り上げましたが、今回は新たな文脈のもとで再構成し、より体系的に整理することを試みました。また、「科普」という概念を初めて耳にする方もいらっしゃることを踏まえ、できるだけ分かりやすい表現を心がけて発表しました。発表後には、中国の「科普」と科学コミュニケーション論との関係性や、疑似科学の定義に関する議論などが交わされ、有意義な学びを得ることができました。【徐】