2023年11月6日

演習(大学院ゼミ)の記録

【論文分析】

Kenichi Natsume, “Abstractive and Hypothetical Methodologies of Energetics: Physical Sciences between Mechanics and Chemistry in Victorian Britain,” Historia Scientiarum 29 (2022): 300-317.

本論文は、19世紀イギリスにおけるエネルギー論の展開を主にウィリアム・ランキンの物理学方法論の分類にしたがって分析したものです。本論文で主張されている、ヴィクトリア朝イギリスにおいてエネルギー論が物理学と化学の間で発展したというテーゼに関してはもう少し議論の余地があるように思えましたが、オストヴァルトがファラデーの「力」概念を自らのエネルギー論と結びつけて自らを彼の後継者と位置付けているという指摘は、エネルギー論の歴史を考える上で興味深いと思いました。個人的には、ケルヴィン卿のエネルギーに対する考えが概観されている点で本論文は非常に参考になると思いました。【滝澤】

【書評紹介】

Victor Seow, Carbon Technocracy: Energy Regimes in Modern East Asia. Chicago/London: University of Chicago Press, 2022.

Review by Grace Yen Shen, Isis 114 (2023): 674-676.
本書は、20世紀初頭に日本によって大規模開発された中国撫順の炭鉱を題材とし、「動力とエネルギーに基づく進歩」というイデオロギー(“carbon technocracy”)が、帝国主義的関心を持っていた日本から、戦後の中国による開発主義にまで連続していたことを論じた本とのことです。特に、戦後の地球温暖化やエネルギー安全保障に関わるテーマですので、炭鉱開発の実践とイデオロギーは注目に値すると考えます。20世紀日本科学技術史の国際的文脈を踏まえるために、読むべき本の1冊であると思います。【猪鼻】

【研究発表】

「1880・90 年代のフランスにおける芸術的ポスターの様式比較」

本日は、私の研究テーマである「1880・90年代のフランスにおける芸術的ポスター」について、研究分野の概要とポスター分析の方法を中心に発表を行いました。多くの質問をいただき活発な議論をすることができ、今一度新鮮な見方で自身の研究内容に向き合うことができたと思います。【S】