2023年10月16日

演習(大学院ゼミ)の記録

【論文分析】

Karen L. Carter, “The Spectatorship of the “Affiche Illustrée” and the Modern City of Paris, 1880-1900,” Journal of Design History 25 (2012): 11-31.

デザイン史分野でありながら、ポスターを軸に19世紀フランスにおける人々の情報の受け取り方の変化(見ることの態度)について、文化史的に論述している点に興味を持った。一方で、授業内でも指摘されていたが、美術史やデザイン史における近代ポスターの位置づけや、それに対する本論文の研究目的についての説明が十分でないことは、読む上で注意が必要だと思った。ポスターに関するデザイン史と、媒体(特に人々の情報の受け取り方)の歴史の中間に位置する論文だと感じた。【S】

【書評紹介】

Michael Hughes, The Anarchy of Nazi Memorabilia: From Things of Tyranny to Troubled Treasure. New York: Routledge, 2022.

Review by Richard Overy, Technology and Culture 63 (2022): 863-865.
今回の書評では『The Anarchy of Nazi Memorabilia』という本を扱いました。内容はナチスドイツが当時作った記念品についてその物質性に着目してナチスドイツを分析するとともに、それらの記念品の価値がコレクターによって変えられてしまうことを案ずるものでした。
特に博物館資料保存論の考え方に近いものもあり、負の遺産という側面にあまり強く感情が引っ張られていないように見える点と、記念品が元々持つ価値が変動しないように本の著者が博物館に期待をしているように読み取れる点が印象的でした。【西原】

【研究発表】

「東京大学工学部原子力工学科の設立」

本日は、本年5月に行われた科学史学会で発表した内容のうち、東京大学工学部原子力工学科の設立に関する部分を発表しました。質疑応答では、私の他の研究との関連性についてや、先行研究との関連性について質問をいただき、自分の研究を、より広い視野の中で位置づけるとどうなるのかについて考える時間が持てました。博論をまとめる際はそのような観点が必ず必要になるので、今回質問をいただけてよかったです。【猪鼻】