2022年12月8日

演習(大学院ゼミ)の記録

【書評紹介】

Hans Radder, From Commodification to the Common Good: Reconstructing Science, Technology, and Society. Pittsburgh: University of Pittsburgh Press, 2019

Review by Ashton W. Merck, Isis 113 (2022): 684–685.

20世紀に生じた科学の商品化(Commodification)について、特に特許制度に着目し、共通善(Common good)の観点から哲学的に検討を加えた書籍です。書評では、著者の貢献がどこにあるのか、物足りないところがどこなのかが示され、評者にとっては全体的には肯定できるであろうことも分かりました。研究開発主体としての企業の存在感が大きくなっていく中で、特許制度を無視することは出来ないと思っていましたので、こういった研究もフォローする必要があると感じました。【猪鼻】

【論文分析】

Henry M. Cowles, “The Age of Methods: William Whewell, Charles Peirce, and Scientific Kinds,” Isis 107 (2016): 722–737.

科学方法論の起源であるヒューエルとパースをめぐる考察。両者とくにパースの研究とその背後にある環境が詳細に論じられており、どのような時代と環境において科学哲学が生まれたのかがよく理解できた。一方で、ハッキングのループ効果を援用するなど多少の工夫はみられるが新規性があまりなく物足りない印象を受けた。【佐々木】

【研究発表】

「分析美学を用いての作品分析」

研究対象であるストックホルム地下鉄駅のパブリックアートに、現段階でアプローチする方法として使用の検討をしている分析美学について芸術家二人の作品を例に発表しました。発表の内容自体は有名な事例でしたが、自分の研究を別の視点から見直せる大事な過程になりました。ディスカッションでは、分析美学の定義に対する姿勢、作品設置場所の意味など研究の課題が明示され、良い機会にすることができました。【松山】