2022年12月1日

演習(大学院ゼミ)の記録

【書評紹介】

Conrad Totman, Japan: An Environmental History. New York: I.B. Tauris, 2014.

※〔邦訳〕コンラッド・タットマン著,黒沢令子訳『日本人はどのように自然と関わってきたのか:日本列島誕生から現代まで』築地書館,2018年.

Review by Yuki Miyamoto, Canadian Journal of History 53 (2018): 519-521.

本書評は、「日本人と自然環境」をテーマとする研究で著名な日本学者タットマンの代表的な著作について取り上げたものです。評者も指摘するように、本書では「自然環境」とそれに伴う社会の変化についての客観的データを、時代背景とするというよりもむしろ分析視角の主軸として用いるという、日本学に留まらず歴史学、あるいは社会学にとって新たな方法論の一つが提示されていました。本書では大きなテーマとしては取り上げられていない、自然災害の記録と併せて検討した際にどのような史的側面が描き得るのかについては興味あるところです。【菱木】

【論文分析】

Jessica Ratcliff, “The East India Company, the Company’s Museum, and the Political Economy of Natural History in the Early Nineteenth Century,” Isis 107 (2016): 495–517.

本論文は19世紀に東インド会社によって設立された東インド博物館が、当時の科学の発展や学会増加に対しどのような役割を果たしたのかを論じたものです。あくまでも商業的な関心から始まった博物館が、当時の行政・政治経済の影響を受けながら、最終的には科学の発展へと繋がってゆく展開が興味深かったです。(論文内でロンドンの収集が周縁地域の収集を制限した可能性について言及されていましたが)個人的には、植民地主義に基づいた博物館であったことを踏まえた上で、この博物館の評価をもう少し掘り下げて行う必要があるのではないかと感じました。【澤井】

【研究発表】

「19世紀フランスの芸術的ポスター」

研究テーマである19世紀フランスの芸術的ポスターについて、現時点で考えている修士論文の構成と、論文に含める予定のリトグラフ印刷の歴史・技術についての主に2つのトピックについて発表を行いました。特に、修士論文の構成については、主張や目的など論文の根幹に関わる内容について詳しいご質問をいただきました。今回の発表で得られたことを踏まえ、資料調査も引き続き行いつつ、論文構成や論の展開をより具体化させていきたいと思いました。【S】