2025年6月16日

演習(大学院ゼミ)の記録

※6月2日の授業を実施できなかったため、当初予定を変更して研究発表を2件実施

【研究発表1】

「画像⽣成技術による美術的創作労働の変化」

今回の発表では、修士論文の構成案と、それぞれの章で扱う予定の内容について紹介しました。

特に第2章で取り上げる、芸術制作におけるツールの変遷と創造性の再構成について少し詳しく述べましたが、全体としてはまだ構想段階であり、今後さらに文献整理を進める必要があると感じています。

これから、創造性という概念の検討と、それを非物質労働や実践現場の語りとどのように結びつけていくかが課題となります。また、「先行研究は序論にまとめたほうがよい」といったご指摘もあり、今後の論文執筆を考えるうえで重要なヒントをいただきました。

こうした点を踏まえつつ、文献の読み直しや構成の再検討を進めていきたいと考えています。【王藝】

【書評紹介】

Chaim Gingold, Building SimCity: How to Put the World in a Machine. Cambridge, MA: MIT Press, 2024.

Review by Daniel Whelan-Shamy, Technology and Culture 66 (2025): 301-303.

書籍「Building SimCity」は、人気シミュレーションゲームのSIMCITYがどのような経緯で生まれたか、また、筆者はSIMCITYというゲームが単なるおもちゃではなく、教育、都市計画、デザインビジネス、政治などを結びつける創作物であると述べています。評者はこの書籍が、初めてSIMCITYの全体の歴史をまとめたものであると同時に、ソフトウェア開発とゲーム開発の両方の視点に着目したものであると述べています。一方で、書評中間の書籍の内容についての説明は、専門的な内容が多く難解であり、あまり読者に優しくないと感じました。【佐々木】

【研究発表2】

「人工知能心理カウンセリングによる文化的バイアス」

本発表では、AIチャットボットによる心理カウンセリングの導入が、どのような文化的・倫理的課題を抱えているかを検討しました。コロナ以降、メンタルヘルスへの関心が高まる中、AI技術の活用が進んでいますが、その多くは欧米中心の価値観や治療モデルに基づいており、異文化に対する十分な配慮がなされていません。

たとえば、宗教や家族観の違い、幻聴に対する地域差のある解釈が見落とされることで、AIが無意識に差別的な対応をするリスクがあります。また、AIの倫理枠組みや信頼性・妥当性の限界も明らかになっています。

本研究では、こうしたバイアスを可視化し、AIカウンセリングの有用性と限界を多文化的視点から問い直すことを目的としました。【卞】