2025年4月26日

演習(大学院ゼミ)の記録

【文献講読】

日本貿易振興会『1958年ブリュッセル万国博覧会報告書』日本貿易振興会,1959年.

〔4〕本博覧会の状況

428日(月)に、「[4] 本博覧会の状況」(pp.20-43)を読んだ。今回は会場や各展示館の概要を、会場地図も参照しながら確認した。ブリュッセル万国博覧会は 300を超える国と地域・国際会議等が参加しており、当時としては大規模な国際行事であった。そのため、駐車場も含めた会場整備は大規模な公共整備事業であることが分かった。また、ベルギーが建設したアトミウムと呼ばれる鉄の結晶を模した巨大なシンボルタワーや、数か国の展示館でみられた「核エネルギーの平和利用」といったテーマ選びからは、1960年を前にした当時、先端的科学技術とは何とみなされていたのかの一端が垣間見えた。個人的には、他の参加者も指摘していたとおり本日読んだ箇所には随所に主観的な感想や文芸的なレトリックが書かれているところが気になった。そうした記述を読み、展覧会の事業報告書は普遍的で客観的な資料と思われがちだが、必ずしもそうではないのだということを感じさせられた。【天野】

【書評紹介】

Heike Weber and Stefan Krebs (eds.), The Persistence of Technology: From Maintenance and Repair to Reuse and Disposal. Bielefeld: transcript, 2021.

Review by Kevin L. Borg, Technology and Culture 64 (2023): 936-937.

今回紹介したのは、一般的に着目される開発のための技術ではなく、すでに製造・流通・使用されている製造物における維持管理、修理、再利用、そして廃棄に関連した技術、及びそのそれらの技術における時間的な交わりを「技術の永続性」と題して考察した文献の書評です。今までも技術史において車に関しては、開発だけでなく整備という観点の研究の蓄積が見られるため、評者も自動車に強い関心を見せていました。日本でもインフラの保守に関しては喫緊の課題として広く認識されているはずですが、そこで「現場労働者」に踏み込む視点はまだ少ないと思われるため、貴重な研究と出会えたように思います。【神村】

【研究発表】

「1970年代初頭日本における医学・薬学の社会的役割」

本報告では、昨年度に執筆した修士論文をブラッシュアップしていく形で本年度の研究計画を立てているため、本年度の研究に際して改めて注力する点について確認する目的でレジュメを作成し、発表いたしました。問題意識に関する指摘や冗長な箇所の修正提案等、非常に有意義な助言をいただけて良かったです。とりわけ、多様な視点から見た問題意識に関する指摘を頂けたことが、現在の方法論から大きく逸脱せずに新しい議題を提示できる可能性や、扱う情報の整理の基準等が自分の中で明確になったという点で今後に活かせる知見を得ました。【工藤】