2022年11月10日

演習(大学院ゼミ)の記録

【書評紹介】

Joshua P. Howe, Behind the Curve: Science and the Politics of Global Warming. Seattle/London: University of Washington Press, 2014.

Review by Samuel Randalls, Isis 106 (2015): 503-505.

米国の気候変動をめぐる政治と科学について、その歴史的経過を論じた書籍への書評です。具体的には、地球温暖化がKeelingが検討したような科学的探究から、現在的な政治問題へと移り変わった過程を検討しています。書評で言及されているとおり、気候変動について政治と科学の連なりを論じている書籍は少なく、科学的な対策と科学者の助言を一致させる「合意科学」アプローチの失敗や、民主党・環境保護主義者と気候変動科学者がエネルギー・防衛問題について連合を形成したことが気候変動対策を失敗に陥らせたことなどを描いた本書籍は、評者の言葉通り貴重であると考えています。【N】

【論文分析】

CLAIRE BROCK, “SURGERY, SUCCESS, AND THE ROLE OF THE PATIENT IN CLEFT PALATE OPERATIONS, CIRCA 1800–1930,” ISIS 113 (2022): 22-44.

19世紀から20世紀初頭のイギリス、ヨーロッパ、北アメリカにおける、口蓋裂手術にまつわる議論を取り上げた論文です。口蓋裂手術は、外科的な治療も難しく、さらに完璧な治療には、患者の努力が必要不可欠であると筆者は主張しています。筆者はこの症例を取り上げることで、論文で対象としている、手術環境が大きく改善された時期の歴史を、より複雑に捉えなおすことを試みています。口蓋裂についてまとまった二次資料がない中、複数地域の多くの一次資料を用いて論を進めている点が印象的でした。特に、医者自身の発言・考えが載った書籍や、患者のカルテを資料として多く引用している点が、特徴的であると思いました。また、未だ統一された口蓋裂の治療法が確立されていない現代において、この論文のテーマは重要性が高いと思いました。【S】

【研究発表】

「東京大学原子力工学科の成立」

本日は、東京大学工学部原子力工学科の設立に関して、現在調査・研究が進んでいるところまでを報告いたしました。質疑応答では、分かりにくかった部分とその改善策や、追加で参照すべき資料などに関してご質問・ご助言いただきました。特に、学部と大学院の関係をどう整理するのかが、今後の重要な課題だと認識いたしました。研究の目的に関しても、大いに考えさせられました。貴重な機会をありがとうございました。【猪鼻】