2022年10月13日

演習(大学院ゼミ)の記録

【書評紹介】

ERIC SCHATZBERG, TECHNOLOGY: CRITICAL HISTORY OF A CONCEPT. CHICAGO: UNIVERSITY OF CHICAGO PRESS, 2018.

Review by David E. Nye, Technology and Culture 61 (2020): 1212-1213.

本書は「テクノロジー」という言葉の意味(主として英語における)を歴史的に探究したものです。この語が今日のような意味で広く使われるようになったのは20世紀後半だということですが、本書では古代ギリシアの「テクネー」まで遡ってこの概念を詳しく検討しています。評者曰く技術史に携わるものにとっては必読とのことで、私もずっと積読なのですが、じっくり読みたいと思っている1冊です。【有賀】

【論文分析(2件)】

杉本舞「科学史・技術史関連科目とはどのような科目か?:2016年度シラバスのテキストマイニングを手掛かりとして」『科学史研究』第57巻(2018年),2-19頁.

本論文は、2016年度の日本の大学における、科学史・技術史関連の授業の開講状況について、社会学的アプローチで調査・分析を行なったものです。「科学史研究」に掲載されていながら歴史学的な手法ではない論文のフォーマットと、大学のシラバスを用いた科学技術社会論的な内容に興味をひかれました。私自身、筆者が使用していたテキストマイニングや、科学史・技術史全体の分野やトピックについて勉強不足であるため、他のゼミ生とのディスカッションによって、科学史・技術史の領域の広さおよび研究アプローチの多様さを改めて認識することができました。その点で、有意義な報告になったと考えています。【S】

隠岐さや香「18世紀における河川整備事業とパリ王立科学アカデミー」『科学史研究』第48巻(2009年),129-141頁.

本論文は18世紀パリにおける二つの河川整備事業の事例から、この時代に行政官、技師、学者たちの役割がどのように再定義されたのかを検討したものです。整備事業について資料を詳細に検討するのみならず、アカデミーに属する学者の政治的決定への参与などが論じられており、18世紀科学アカデミーの実態についても理解を深めることができました。また私は科学者からなる組織や科学会議の運営などに関心があるので、その点でも興味深い論文でした。【澤井】