2022年9月29日

演習(大学院ゼミ)の記録

【書評紹介】

Glen E. Rodgers, Traveling with the Atom: A Scientific Guide to Europe and Beyond. Croydon: Royal Society of Chemistry, 2019.

Review by Alan Rocke, Isis 112 (2021): 175-176.

本の表紙にキャリーケースが描かれているように、本書は原子の歴史について、関連する科学者や地名を旅行ガイドのようにまとめたものです。評者によればこれを書いた著者はもともと化学者で、本の内容も彼の専攻(無機化学・物理化学)に関連するものが多いようです。19世紀の化学史や有機化学に関して記述が少ないのは個人的にやや残念ですが、いつかこの本をもってヨーロッパ旅行ができたらとても有意義だろうと思いました。【澤井】

【論文分析】

和田正法「工部大学校の終焉と帝国大学への移行をめぐる評価」『科学史研究』第57巻(2018年),186-200頁.

本論文は、工部大学校の終焉に伴って、その特徴であった実地教育が途絶えてしまったことを否定的に捉えてきた先行研究に疑問を持ち、公平な視点からその終焉を再評価することを企図したものであり、その姿勢には共感を覚えました。再評価にあたっては、工部大学校の設置の目的が直接的に分かる史料や、間接的に目的が判断できる社会的状況を示す史料などを元に多角的に分析されており、説得力を与えていました。ゼミでの議論では、タイトルに付された「評価」という語の意味とは何かが話題にあがり、特定の語の使用について改めて考える機会となりました。また、本論文を踏まえた上で、実地教育の断絶はどのように評価すればよいのかが気になりました。高等教育における「工学部」の源流を捉える上で、重要な論文だと思います。【猪鼻】

【ガイダンス(続)】

参考文献の書き方

基本中の基本ではありますが、参考文献の書き方について取り上げました。一例として『科学史研究』とHistoria Scientiarumの投稿規程を取り上げて、書誌情報をどのように記すことになっているかを細かく確認しました。【有賀】